□■ 雨晴れ、そして雨 ■□


 まるで、眠りの妖精が微睡の砂を撒いているかのよう。

 ザー・・・という、地に落ちた雨の音。
 ポツポツと窓を叩く雨の音。

 ゆっくりと落ちてくるまぶたを、なんとか持ち上げようと試みる。


 誰もいない教室の隅、ぽつんと置かれた椅子に腰掛けて、鳴り止まない雨音に耳を傾けていた。


 かくん、と頭が落ちたのも気にならないくらい、穏やかだった。
力が抜けきってだらりと垂れた両手が、じんわりと熱を持っている。
 暑くも冷たくもない空気が、雨の音に震えながらその手を撫でた。

 わずかに開いていた視界が霞む。
 全身の気だるさが、とても気持ち良い。


 ふと、右手に触れるひんやりとした感触に気がついた。
 雨音は絶えず、うすく開けたまぶたの向こうの、窓の外は薄暗い。

「おネムの手だ」

 下の方から声が聞こえて、目を落とす。
「・・・・・・何してんの」
「呼んでも全然起きないから。死んでるんじゃないかと」
 そう言って笑った君の顔はやけに晴れ晴れとしていて。


 ひやりとした君の指が、熱をもった私の掌に心地良い。


「帰ろう」

 君の声。

「うん」


 答えながら、私が見ているのは激しい音と共に木と、地と、窓を叩く、雨。

 窓と、その向こうにあるベランダの欄干を這う雫は、とてもゆっくりだった。


「見て。今日はちゃんと傘持ってきました」
 私の眠気を吸い取った手に引っ張られてそちらを向けば、閉じられた紫色のビニル傘を、自慢そうに手にして笑う、君。

「毎回ちゃんと持って来てよね」
 私は苦笑いを浮かべながら立ち上がると、窓の隣を歩いて自分の机に向かう。
 そこに立て掛けられているのは、透明のビニル傘。
 私はそれと、机の上に置いてあった鞄を手に取って、窓の外に目を向ける。


 当たって弾ける雨粒たちを、部屋の窓から眺めるのはとても気持ちがいいんだ。


 でも。


「帰ろう」

 そう声をあげれば。

「うん」

 君の声が聞こえるから。


 だから私は傘を手に取り、雨の下に颯爽と飛び出すんだ。
 服や鞄が濡れるのも、あまり気にはしなかった。



 隣には、同じように少し小走りで雨の中を行きながら笑う、君がいる。

【完】  

  あとがき
 こんにちは、夢藤です。
 あああ、やっぱりスランプです。抜け出せませぬ。
 なんか、まとまりないなぁ。。

 にしても、雨ネタが多いですね、私。
 好きなんですよ、雨。
 激しい雨も、優しい雨も、全部好きです。
 もちろん、晴れの日も大好きですけどね!
 雨は落ち着きますよね〜。。
 雨の日に、部屋の中から窓の外見てるとちょっとした優越感に浸れます(え゛)
 話すと長くなっちゃうんで、なぜか聞きたい人は、掲示板まで(いらん)

 ではでは、夢藤でした。


  2005/10/29