□■幸せになる方法■□ 君が溜息を吐いた。 深呼吸かと思うほど大きく息を吸って、また大きく吐き出した。 私はそんな君を見て、声をかけてみる。 「最近毎日疲れるよね」 私の隣にあった回転椅子を引いてだらしなく座った君は、私を見ようともせずにまた大きく溜息を吐いた。 「まあねー・・・・・・って、若い身空で何言ってるの」 からかうように君が笑った。 私もつられるようにして笑ったけれど、疲れてるんだもの。イマイチ心からは笑えなかった。 すぐに黙ると、私は回転椅子の上でぐるぐると回った。椅子がキイキイと音をたてる。 しばらくは楽しくもないのに回っていた。それが止まったのは君が私の回転椅子の背もたれを両手で掴んだ時だ。 「結局みんな、なるようになるんだよねー・・・・・・」 君がゆっくりと力を込めるのに合わせて、回転椅子も、それに座る私も、ゆらゆらと左右に揺れる。 「周りに流されない強さがいると思うんだよ」 呟くと、私はぽんと椅子から降りた。 君に押されていた分、勢いの余った回転椅子が、その場でからからと回った。 「うん」 君も同じように立ち上がる。 「でもそれはけっこう難しいことだと思うんだよ」 「うん」 君は相変わらず頷くだけだった。 改めて沈黙。 あまり広いとはいえない薄暗い部屋の中で、君の吐いた溜息はやけに大きく聞こえた。 「溜息やめなよ、さっきから。幸せ逃げるよ」 私が注意すると、君はにやりと笑った。 「今のは幸せを逃がしてたんじゃなくて、不幸を吐き出してたんだよ」 「はあ?」 やんわりと訂正されて、私は思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。 君の言うことについていけなくなるのはよくあることだ。でも、今まで一度として君が嘘をついたことはなかった。 「どういうこと」 だから聞いてみる。 そして君は、至極当然という顔をして答えた。 「嫌なことはね、全部、安心できる場所で吐き出すんだ。そしたらさ、ほら。すっきりして幸せつかみにいけるんじゃないかなー・・・・・・みたいな?」 恥ずかしかったのか、少し言葉を濁したものの、にこりと笑った君の顔には、やっぱり嘘なんか見当たらなくて。 私も思わず微笑んでた。 今、貴方は幸せですか? そう尋ねられたなら。 迷わずYESって言えると思う。 私は溜息を吐くとまた、回転椅子に座り直した。 ぐるぐる回る。君も、私も。 疲れたら溜息。もちろんここで。君も、私も。 【 完 】 【あとがき】 どうもこんにちは。夢藤です。久々に(ってほどでもないけど)小説を書いてみました。 今回もテーマに『幸せ』を取り入れつつ、溜息の話です。私、溜息癖があるんですよねー・・・(暗っ!?)でも、私は溜息する時、この話と同じようなこと考えながら溜息吐いてるので、他人にどう思われようが私は勝手に幸せです。。(何) あとはー・・・回転椅子ってアンタ・・・(汗)って感じですね。私がどんな部屋を見て書いたかは皆さんの想像を壊してしまうかもしれませんのであえて言いません。回転椅子のある狭い部屋です。想像してみてください(人任せ!?)・・・まあ、詳しくはツッコまずにスルーしちゃってください(滅) それでは、今回のあとがきはこの辺で。毎回思うんですけど、私のあとがきって短いですか?まあ、こんなくだらない話たらたら続けられても困っちゃうでしょうから、このくらい大丈夫ですよね?むしろこんなもん書くなってくらいですよね。小説とは関係ないことまで喋ってすみませんでした。(いつもだろ) ではでは、夢藤でしたv 2005/05/15 |