見上げれば、無限に広がる秋空が、隅々まで澄み渡っていた。

   ○● 木枯らし行路 ●○

 カゼに吹かれて浮き上がった鳥肌を、私は手で撫でつけた。
「さむっ!」
 叫んだ。

 その声に応えるように、通り過ぎた風に阻まれていた太陽のぬくもりが、柔らかく私たちを照らした。

「寒かったり暖かかったりで、全身がゾワゾワする・・・」
 隣で君が呟いた。
「風邪ひかないようにしなきゃだね」
 そう返すと、君はカラカラと笑って、
「馬鹿だから大丈夫」
「じゃあ、私も平気じゃん」
 言い合っては、また笑った。



「夏と冬だったらー・・・どっちが好き?」
「・・・・・・」

 そりゃあ。

「夏、でしょ」

 暑いのは我慢できるけどね。
 寒いのは、無理。

 でも、君はきっと。

「冬じゃないんだ」

 残念そうに眉を下げた。
 やっぱりね。

 足元に散らばった落ち葉を踏み直すと、カサリと音をたてて崩れた。

「クリスマスとかお正月とか、いろいろあって楽しいのに」
「知ってるよ」

 知ってる。
 けど、さ。

 近付いてくる、冬が怖い。
 今までこんなに冬が来るのが嫌だったことってあっただろうか。いや、ない。
 なんて、いつだったか覚えた古典文法(ちなみに反語表現というやつだ)を思考に取り入れてみたり。

 英単語やら、文法やら。
 頭に入れば入るだけ、冬が来るのが怖くなる。


「うー・・・」
「あー・・・」

 寒さの中で、口をついて出てくるのは意味を成さない声ばかりで。

「うん、やっぱりちょっと寒いかもね」
 君は両手を擦って、ポケットに突っ込んだ。
「でしょ」

 私もそうする。


 冬はどうしても来てしまうもの。
 それだけは、君も私も避けられない。

 だったら、少しでも。


「どっか、寄ろうか」
「そうだね」


 凍えるような寒空は、すぐそばにまで、迫っている。



【完】

 こんにちは、夢藤です。
 さあ皆様、私を好きなだけ殴ってください!!(何)

 いや別に、そっちの気があるとか、そういうわけではなく・・・
 最後の更新からおよそ二ヶ月が過ぎてしまいました;
 お待たせしてしまった皆様には、本当に申し訳なく思っております。
 その上、復活作品がこれでは、怒りますよね・・・??(汗)
 寒くなってきましたねー。
 もう学校生活も残り少ないんだー、とか考えるとちょっと寂しいです。
 それでは、本当に駄作で申し訳ないのですが、次回作も、どうかよろしくお願いします。
 夢藤でした。


   2006/10/15