○● お天気雨ふりの日 ●○

「おー、すごい」

君が、ぺたんと両手を張り付けた窓。
その向こうに眺めるテニスコートには、キラキラと輝く太陽の雫が降り注いでいた。

「めっちゃまぶしー」
落ちてくる雫も、それが広がり渡るテニスコートも、白いような金色のような、眩しい光を放って、細めた目に飛び込んでくる。
ザー、という音も午後の日差しと共に窓の外でとても優しい。

「お天気雨なんて久しぶり」
私も窓に歩み寄ると、透明なそこに貼りつき落ちる雫を指先で追いかけた。
それと同時にキュッと鳴った音が気に入って、私は指を往復させてそれを楽しむことにする。

「はい、あけまーす」
という、お気楽な君の声を聞いて指先を離すと、私の触れていたガラスが、すーっとスライドしていった。
すると、少し湿った空気とキラキラの雫がゆるやかな風に流され飛び込んできて、肌に触れる。

予想に反してその雫はほんわりあったかくて、私は頬についたそれを指先で払うと、キラリと光る指を、腕ごと窓の外へ突き出した。
「・・・あったかい」
「おおー」
君も私にならい、ご丁寧に腕まくりまでして、左腕を外に出した。
「ホントだ、あったかい」


ぽつり、ぽつりと。
思ったよりも大粒の雫が、降り注ぐ。

輝くてのひらは、見慣れたものであるはずなのに、やけに白く光に溶け込んでいた。
それはとても遠くに見えたけれど、伝わる淡いぬくもりは少しくすぐったいほどに感じられて。

「あーあ。びしょびしょ」
君に言われ、ひっこめた腕には、白いシャツがピッタリと貼りついている。
対する君は、まくっていたおかげで助かったはずのシャツを元に戻し、腕の水分を吸わせていた。

太陽はとても晴れやかで。
降り注ぎ、肌を伝うその雫は、いろんなモノを吸い取って滑り落ちていくようで。

再び閉じた窓ガラス。
その向こうにあるテニスコートが。
緑つけたてほやほやの桜木が。
フェンスの外を歩くお姉さんが掲げる、緊急出動中の白い日傘が。



やがて、流して去って行くんだろう輝く雨をしばらく見つめ、私はくるりと踵をかえすと、足取りも軽く歩き出す。

「どこ行くの」
尋ねつつ、ついてくる君を振り返る。

「さあねー」
「ぎゃっ」

答えながら、君に向けて濡れたてのひらを払うように振る。
私の手から放たれたキラリと光る雫を見送りほほ笑む、今日はそんな日。




あったかく輝いていた    



【完】

こんにちは、夢藤です。
おおおおお、お久しぶりですー!!
今回、あまりにもMIDIの更新ができていないので、3年ぶりに小説を更新させていただきました。
お蔵入りになっていたものをちょっと修正してアップしました。
小説はいつもノートに手書きで書いていたので、わざわざ発掘してきましたよ、高校時代のノート(*^m^)
小説用ノートと銘打ってあるものの、至るところに当時の友人が描いた落書きとか、次回のテスト範囲とか書いてあります。
懐かしいような、恥ずかしいような、複雑な気分です(笑
でも、昔書いた小説を読み返すと、いちいちその時のことを思い出します。
ちゃんと私の実体験をもとに書いているので、言ってしまえば小説と言いつつ日記のようなものだったんですよね。
ちなみに、この話は英語の授業終了後に突然降って来たお天気雨を見た時の話でした。
午後の太陽をいっぱい吸った雨はとっても綺麗だったんですよ。

あー懐かしいなぁ。
できることなら、もう一度高校生やりたいものです。
今はこんな小説、もう書けないと思いますし。
ではでは、また機会がありましたら。
夢藤でした☆


   2007/03/15