□■うつらうつら、今日も春■□




 開け放たれた窓から入ってくるそよ風に押されて、白いカーテンが音もなく踊る。


 目を閉じると、木々のざわめく音が遠くの方から聞こえた。




 春の香りがする。




「寝てるの?」


 ゆっくりとした足音と共に、君の控えめな声が聞こえてきた。


 私は答えない。


 だって、今は春だし。





 君が大きなあくびをしたのがわかった。


「んー・・・・・・ねむ・・・・・・」


 君は呟くと、私のすぐ傍に腰掛けた。





 ぽかぽかの陽気。髪を撫でるそよ風。木々のざわめく音。




 春の香りがする。





 私はうっすらと目を開ける。


 視界の隅に揺れるカーテン。目の前には肘をついてうたた寝している君がいる。


 太陽の光がずっと閉じていた瞳に少し眩しい。





 瞼がとろとろと重くなってくる。眠い。


 まずいなぁ。いくら寝ても寝足りない。


 視界が狭くなる。君がぼやけた。鼻をこすってみる。





 その時、ゆらゆらと揺れているだけだったカーテンが大きくなびいた。


「うわ」


 それは、向かいで安らいでいた君の頭を飲み込んだ。


「もー・・・いい気分だったのに」


 君はぶつぶつ文句を言って、カーテンの中から顔を出した。


 君に押し戻されて、白いカーテンはまた元のように穏やかに揺れ始める。


 かき回された君の髪が、ひどく乱れたまま風に乗っている。


「頭、ぼさぼさだよ」


「マジで!?」


 指摘してやると、君は慌てて頭を両手で押さえつけ、何度か触った後に「まあいいや」と呟いて手を離した。





 ぽかぽかの陽気が私たちを包んでいる。


 窓から入るそよ風と、遠くの木々のざわめきが、肌に、耳に、心地良い。





 君がまた、小さくあくびをもらした。


 こんなに幸せでいいのでしょうか。


「これからファミレス行こうよ」


 君が楽しそうに言った。


 私はもらしかけたあくびを噛み殺して答える。


「んー・・・・・・いいね」





 春の香りがする。

【 完 】


  【あとがき】
 こんにちは、夢藤です。今回は春ということで桜物語!!(え゛。。
 春なのに雨降っててごめんなさい。でもまあ、意図してやったことなんで。ちゃんと私の中では思惑があってこんな話になったのです。もっとあったかいお話が作りたかったのにな・・・これじゃあ皆様に風邪をひかせてしまう!こんな春先にすみませ〜んっ!!

 苦情とかは新設のメールボックスから
お願いしまーす・・・(涙)
 桜大好きです。もう散っちゃいますね・・・残念。でも緑いっぱいの夏も大好きです!それはそれで待ち遠しいですねぇー・・・それでは、ありがとうございましたv