○● やる気なし+やる気なし= ●○

 最近、疲れているのです。
 なんてことは、ずっと前から思っていたりするのです。


 まぶたはいつだって重いし、両肩も鉛のように感じる。
 大きく溜息を吐いて、回した首がコキコキと小気味良く鳴った。


「ヘンな音出さないでくださぁい」

 じろっとこちらを見ながらそう呟く君は、幾分私よりも元気そうに見えた。
 私と同じように、冷たい壁に背中を預け、どこから持ってきたのか、黄色い毛糸であやとりをしている。

「・・・そんなこと言われても、ねェ」

 溜まった疲労は、泥のように、体の中で渦巻いて、奥から、奥から、溢れ出てくるんだから。

「疲れた。眠い。肩凝った」

 こんなこと言ったって、それが流れていかないことくらい、分かっているけれど。

「こっちまで気分重くなるじゃんかー」
 君は、手元に集中しながら溜息。
 さっきからその紐は、一体何を形成しているんだろうか。

 それっきり、私は黙って君の手元を見つめ、君も無言で手を動かしていた。


 複雑に入り組んでは解かれ、また入り組んで解かれる。
 そんなサイクルの合間合間に、時たま、私も良く知る“ホウキ”や“橋”が出現する。



「あーあ、なんじゃコリャ」

 突然、発せられた君の呟きに、私はぼやけ始めていた視界の、ピントを合わせた。

 複雑な綾から指を抜き、摘み上げると、再生不可能といえるほどにこんがらかった、黄色い毛糸。
 プランと垂れ下がったそれの、中央あたりに、元凶と思われる大きなコブが出来ていた。


「あーあ」
 私も呟き、でもそれ以上は何も言わずに力なく垂れる毛糸を君の手から受け取り、そのコブに指を掛ける
「疲れてるんじゃなかったっけ」
「いいよ。こういうの、好きだし」


 でも、わかるんだ。
 これは解けないなって。


「毛糸は、解くの難しいね」
「じゃあいいよ」
 君は私の手からそれを奪って、無雑作にポケットに突っ込んだ。


 はぁー、と。
 今度は二人そろって溜息を吐き。


「真似しないでよ」
「真似じゃないって」


 なんとなく笑ったのも、二人同時で。

「あーあ、何もしたくないや」

 無情にも鳴り響くチャイムを耳に捕らえながら、私はのろのろと席に向かった。




【完】

  あとがき
 こんにちは、夢藤です。
 今回、テンションの低いお話で申し訳ないです;
 バリバリ元気ですから!毎日馬車馬のごとく動き回ってますから、大丈夫ですよ!(何が)
 ただ、どんな悩みだって、同じものを抱えてる人が、きっとどこかにいるんだよー、と。
 自分ひとりが悩んでるわけじゃないんだよー、と。
 そんなことが言いたかったわけでございます。なんて、ここで語ってたら駄目ですね(苦笑)
 でもほんと、同じ悩みを抱える人がいると思えば、いくらか自分の苦しみも楽になると思いますよ。
 夢藤だって、なんにも悩みなんてもってないヤツ、とか思われがちですが(実際あまり悩みませんが)、たまに壁にぶち当たった時には、そうして切り抜けますね。
 むしろ、私なんかよりも重い悩みを抱える人だっているんだぞう、と、思うわけですよ。
 このような若輩者がそんな大きなことを言うのもどうかと思いますがね(汗)
 皆さん、頑張りましょう!落ち込んでるだけじゃ、駄目ですよ、多分(笑)

 それでは、あとがきなのかどうかよくわからん話となってしまいましたが、これにて失礼させていただきます。
 こんなところまで読んでくださり、ありがとうございました。
 ぜひまた次回作もよろしくお願いいたします!!夢藤でした。
   


   2006/06/17